住宅着工戸数 2019年4月

住宅着工戸数データ

4月の住宅着工戸数は79,389戸で前年同月比で▲5.7%、季節調整済では前月比▲5.8%でした。

前年同月比と季節調整済の違い

ここで前年同月比と季節調整済の違いを解説します。

データはできれば前月のものと比べた方が方向性の見極めがしやすくなりますので、4月のデータであれば3月のものと比べるのがベストです。

でもデータには季節性があります。単純に考えても2月は28日間しかないのでデータを加工しなければ他の月よりも値が小さくなる可能性があります。また、リゾート地のホテルの稼働率は夏休みのある7・8月が高くなる可能性が高いので、8月と比べて9月が大幅に下がったと言っても条件が違います。今年は例年より台風が多かった、といった天候の影響もあるでしょう。

これに対処する方法その①が前年同月比です。前の年の同じ月と比べているので、2月なら2月どうしで両方とも28日間(閏年は29日間になりますが)で比較しているので日数差が消去されます。

前年同月比の利点は実際のデータがそのまま使えて単純であること、欠点は暦以外の条件は調整されないこと、長期上昇トレンドの後に足元のデータが下降に向かい始めていても前の年のデータと比較しているためにトレンドの変化に気づかない可能性があることです。

これに対処する方法その②が季節調整です。調整の方法はデータや調査主体によって違いますが月による日数の差や閏年などの暦の条件、天候などの自然条件、夏休みなどの制度・慣行にかかわる条件を調整して前月のデータと比較できるようにデータを加工します。

季節調整の利点は前月のデータと比較しているので長期上昇トレンドの後で足元のデータが下降に向かい始めている場合にトレンドの変化に気づきやすいこと、欠点は調整の計算が複雑になる上にどのように調整しても完璧にはならないことです。

データ内訳

冒頭の住宅着工戸数のデータはより細かく内容がわかるように「利用関係」によって分類して内訳が示されています。

あなたが工務店に家を建ててもらった後に自分で住む予定であれば「持家」、テナントを募集して賃貸する予定であれば「貸家」、あなたが不動産開発を手掛けていて建てた家を販売する予定であれば「分譲住宅」になります。

この利用関係でみたのが以下の表です。

前年同月比季節調整済
前月比
持家+9.2%+2.2%
貸家▲16.7%▲7.5%
分譲住宅▲6.0▲21.0

持家は7か月連続の増加、貸家は8か月連続の減少、分譲住宅は9か月ぶりの減少(いずれも前年同月比)ですので貸家の不調が目立っています。

データの見方

持ち家は引き続き堅調です。異次元緩和政策が継続しており依然として有利な融資条件でローンが組めるからだと思われます。雇用・所得環境が安定していることも寄与しているでしょう。

一方貸家、つまり投資用物件では昨年からサブリース業者の破綻や違法建築などの不祥事が発覚しており営業環境が悪化している上に、融資審査の厳格化がはかられていることが影響しているものと思われます。

分譲住宅の減少は特に季節調整済み前月比の▲21.0%という数字は気になりますが、あくまでも9か月ぶりに減少に転じたものですし、最終的にはエンドユーザーに販売されるわけですが持家の着工戸数が増加を維持しているのでエンド需要は堅調と考えられ過度に神経質になる必要はないかと思います。