首都圏マンション市場 2019年7月

不動産経済研究所の⽉次データの発表です。

⾸都圏での新築マンションの発売⼾数は前年同⽉⽐で▲35.3%でした。契約率(発売したマンションが成約に⾄った率)も67.9%と、先月よりは改善したものの好不調の分かれ目と⾔われる70%を下回りました。⼀⽅、1⼾当たり価格は5,676万円、㎡単価は86.0万円でそれぞれ前年同⽉⽐▲8.3%、▲6.2%でした。

数量ベースのデータがマイナス、価格ベースのデータも総額・単価ともにマイナスということですので市況は弱含みと見て取れます。契約率が前月より改善したのは単価の下落による部分もあるでしょうし、7月の参議院選挙で自由民主党が勝利したため消費税増税の方向性が既定路線と確認されたことによる駆け込み需要の顕在化という側面もあるでしょう。

全体としては⽶中貿易摩擦に起因する将来⾒通しの不透明感が引き続き需要に影響していると思います。香港情勢の混迷も、経済問題に人権問題がからんでくることにより米中貿易合意をより複雑化させる要因として世界経済の先行きの不透明感を増幅する方向にはたらくでしょう。

労働需給は全体としては引き続き人手不足感があるものの、⼤企業を中⼼にIT化による⼈員の削減(配置転換・新規採⽤の抑制による⾃然減を含む)などの雇用構造の転換が将来の所得環境に対する不安を生んでいる部分もあるでしょう。

住宅の⾃⼰取得⽤ローンであるフラット35の投資⽤不動産に対する不正転⽤融資問題の影響で⾦融機関が個⼈向け不動産融資全般について慎重姿勢に転じているのではないか、という点も引き続き懸念されます。

事業融資の需要が低迷する中、個⼈向けの住宅ローンは貸し倒れ⽐率も低い有望分野ですが、それだけに当局も⾃⼰所有目的の融資の投資⽤物件の転⽤には目を光らせ続けると思われます。

新築マンションに限らず不動産は⾼額ですのでローンの利⽤が⼀般的であり、新規融資の流れが滞り始めると住宅市場が変調する可能性もありますので、引き続き動向を注視する必要があります。