住宅着工戸数 2019年5月

住宅着工戸数データ

5⽉の住宅着⼯⼾数は72,581⼾で前年同⽉⽐で▲8.7%、季節調整済年率換算では前⽉⽐▲3.3%でした。

前年同⽉⽐と季節調整済の違い

ここで前年同⽉⽐と季節調整済の違いを解説します。

データはできれば前⽉のものと⽐べた⽅が⽅向性の⾒極めがしやすくなりますので、5⽉のデータであれば4⽉のものと⽐べるのがベストです。

でもデータには季節性があります。単純に考えても2⽉は28⽇間しかないのでデータを加⼯しなければ他の⽉よりも値が⼩さくなる可能性があります。また、リゾート地のホテルの稼働率は夏休みのある7・8⽉が⾼くなる可能性が⾼いので、8⽉と⽐べて9⽉が⼤幅に下がったと⾔っても条件が違います。今年は例年より台風が多かった、といった天候の影響もあるでしょう。

これに対処する⽅法その①が前年同⽉⽐です。前の年の同じ⽉と⽐べているので、2⽉なら2⽉どうしで両⽅とも28⽇間(閏年は29⽇間になりますが)で⽐較しているので⽇数差が消去され ます。

前年同⽉⽐の利点は実際のデータがそのまま使えて単純であること、⽋点は暦以外の条件は調整されないこと、⻑期上昇トレンドの後に⾜元のデータが下降に向かい始めていても前の年のデータと⽐較しているためにトレンドの変化に気づかない可能性があることです。

これに対処する⽅法その②が季節調整です。調整の⽅法はデータや調査主体によって違いますが⽉による⽇数の差や閏年などの暦の条件、天候などの⾃然条件、夏休みなどの制度・慣⾏にかかわる条件を調整して前⽉のデータと⽐較できるようにデータを加⼯します。

季節調整の利点は前⽉のデータと⽐較しているので⻑期上昇トレンドの後で⾜元のデータが下降に向かい始めている場合にトレンドの変化に気づきやすいこと、⽋点は調整の計算が複雑になる上にどのように調整しても完璧にはならないことです。

データ内訳

冒頭の住宅着⼯⼾数のデータはより細かく内容がわかるように「利⽤関係」によって分類して内訳が⽰されています。

あなたが⼯務店に家を建ててもらった後に⾃分で住む予定であれば「持家」、テナントを募集して賃貸する予定であれば「貸家」、あなたが不動産開発を⼿掛けていて建てた家を販売する予定であれば「分譲住宅」になります。

この利⽤関係でみたのが以下の表です。

前年同月比季節調整済
前月比
持家+6.5%▲2.2%
貸家▲15.8%▲1.8%
分譲住宅▲11.4%▲3.6

持家は8か⽉連続の増加、貸家は9か⽉連続の減少、分譲住宅は4月に9か⽉ぶりの減少に転じて5月も減少(いずれも前年同⽉⽐)ですので貸家の不調が目⽴っている上に分譲住宅もトレンドの変化が見て取れます。

データの⾒⽅

持家は引き続き堅調です。異次元緩和政策が継続しており依然として有利な融資条件でローンが組めるからだと思われます。雇⽤・所得環境が安定していることも寄与しているでしょう。

⼀⽅貸家、つまり投資⽤物件では昨年からサブリース業者の破綻や違法建築などの不祥事が発覚しており営業環境が悪化している上に、融資審査の厳格化がはかられていることが影響しているものと思われます。

分譲住宅の減少は前年同月⽐が▲11.4%と大きく減少しています。

分譲一戸建住宅が6ヶ月ぶりに減少に転じて▲0.4%と微減ですが分譲マンションが2ヶ月連続の減少で▲22.7%と落ち込みが大きくなっています(いずれも前年同月比)。

前回発表の4月分データを見た時には分譲住宅は9ヶ月ぶりに減少に転じたところでしたので一過性の可能性もあり、しかも最終的にはエンドユーザーに販売されるわけですが持家の着⼯⼾数が増加を維持しているのでエンド需要は堅調と考えられ過度に神経質になる必要はないかと思っていたのですが、トレンド変化の予兆である可能性もでてきました。

注視が必要です。