建物の「見栄え」を規制する景観法【不動産鑑定士が解説します】

中学校などで服装や頭髪についての校則がありませんでしたか?
茶髪はダメとか、、、

建物についてもその見栄え・外観についての規制があります。

景観法です。

景観法

景観法の目的は「都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進」することで、そのために5つの基本理念が定められています。

つまり、良好な景観は

  • 国民共通の資産として整備・保全すること
  • 地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和により保全すること
  • 地域の固有の特性と密接に関連するものなので多様な形成が図られること
  • その形成に向けて地域として一体的な取組をするべきこと
  • 現状のみならず将来を視野に入れて形成するべきこと

です。

では一体だれがこのようなことをすか?と言うことになると思います。

国がすること

総合的な施策を策定し実施します。

地方公共団体がすること

地域の特性に合わせた施策を策定し実施します。

事業者・住民がすること

国や地方公共団体が定めた施策に協力します。

つまり

つまり、大まかなルールは国が定め、地域の実情を加味したルールを地方公共団体が定め、事業者と住民がこれに従った建物を建てれば見栄えの整った景観ができあがるという仕組みになっています。

ルール決定には住民も参加できます

「どんな建物を建てようと個人の勝手だろ?一方的にルールを決められてただ従うだけなんておかしいじゃないか!」

と思う方もおられるでしょう。

なので、ルールの策定にあたっては住民も参加できます。

まず、地方公共団体がルール(景観計画と言います)を策定する場合には住民の意見を反映させられるように公聴会などを開きます。

また、公聴会などをふまえて出来上がった景観計画はだれもが知ることができるように開示されます。

公聴会ではあなたの意見を「いやあ、ごもっともです!」といって聞いていたのに出来上がった景観計画は全くあなたの意見を反映していないということもありえますよね?

そこで景観計画が定められる区域に土地・建物を所有している人などは、開示された景観計画に賛成しない場合には景観計画の変更を提案できます。

ただし、その場合は対案を出さないといけません。

「反対!」といっておきながら「でも代替案はありません」では聞き入れてもらえないのです。

また、対案を添えて新たな景観計画の提案をしても採用されるとは限りません。新たな変更によって利益を受ける人がいる分、不利益を被る人も出てくるかもしれないからです。

景観計画が決まったら

景観計画が決まったら、その区域内では建物の新築・増築・改築のみならず

  • 外観が変わる修繕
  • 模様替え
  • 色彩の変更

であっても届け出ないといけなくなります。

景観法の目的は良好な景観の整備・保全つまり街の見栄えを整えることなので、壁の色を変えるだけであっても色によってはダメな場合があるのです。

そして、もしも届出の内容が景観計画に適合しない場合は設計の変更等を命じられることになります。

まとめ

住宅を購入するときに、建売住宅だったり中古住宅だったりすると建物はもとから景観計画に適合するように建てられていることが多いと思いますのであまり景観法を意識することはないと思います。

また、土地を購入して建物を新築する場合でも例えば「外壁の色に赤を希望したのに建築士に景観計画があるのでできません」と言われたりしないかぎりあまり景観法を意識することはないと思います。

景観法は見栄えのいい街並みを陰で支える助演俳優なのです。