相続の相談をする税理士はどうやって決める?【不動産鑑定士の視点から】
相続の準備、口では簡単に言えても身内の方が他界することが前提のお話なのでなかなか進まないのではないでしょうか?
なにぶん「人の死」をもって発生するのが相続ですから、実際に発生してからあわてて対応、ということも多かろうかと思います。
でも普段税理士と接点がない方にとっては、どの税理士に相談したら良いか悩むこともあるでしょう。
不動産鑑定士は税理士の方々と連携して仕事をすることが多く、かといって自分自身が税理士なわけではないので、ここは部外者としての客観的視点から解説します。
相続税の申告件数は税理士数と比べて以外に少ない
まず、データを少しご紹介します。
最も直近の平成30年12月に国税庁が公表した平成29年分のデータによると、平成29年に亡くなられた方が約134万人、うち相続税の課税対象となった方は111,728人で、亡くなられた方全体の8%です。
なぜ亡くなられた方と課税対象となった方の人数が違うかというと、相続すべき財産のない方や相続すべき財産があってもそれが控除額を下回れば課税対象とならないからです。控除額とは相続財産のうち課税対象とならない金額の上限で、相続する人の構成などによって決まります。
一方、平成29年度の税理士数は77,327人でした。
つまり、税理士1当たりの相続税課税対象者数は111,728÷77,327≒1.4人ということです。
しかも、課税対象者の相続税申告が全て税理士によって行われるとは限りません。税の申告は納税者(相続税の場合には財産を相続した配偶者など)が行うのが原則だからです。なので相続した財産が預金のみといった場合には税理士に依頼が来ないことも考えられます。
これらの点をふまえると1年間全く相続税の代理申請がなかった税理士の方もおられても不思議ではありません。
税理士に限らず仕事はできれば実務経験を多く積んだ方にお願いする方が安心なので、どうやったら実務経験が豊富な方を見つけるかが重要になります。
税理士事務所・税理士法人のウェブサイトの見方
全ての事業用ウェブサイトについて言えることですが、誰でも仕事はいただきたいでしょうからウェブサイトの記述は受注を意識した内容になりがちです。
そこでウェブサイトを見るにあたって重要になるのは「実務の経験を積んでいないとわからない内容が見当たるかどうか」です。
では実務の経験を積んでいないとわからないことは何かというと「失敗談」です。
例えば、野球の打撃理論の本を読んで理解するのと、それをグラウンドで同じチームのバッティング投手が投げた球で練習するのと、試合で相手投手が投げた球を打つのとでは全然違います。そして、打者は実戦経験での失敗を糧に成長していきます。
引退された大リーグのイチローさんが現役時代に4,000本安打されて記者会見に臨まれた時に「その(4,000本安打の)裏には8,000回の失敗があるわけで・・・」とおっしゃられていました。なぜうまくいったかではなくなぜ失敗したのかを意識してそこから学び続けたからこそ達成できた4,000本安打の偉業。だからこのようなコメントが生まれたのではないでしょうか。
ウェブサイトの見方に戻りますが、「失敗談」あるいは失敗談そのものではなくても「失敗がなければ学べなかったであろう何か」が書かれているかどうかを見極めてください。
税理士以外の士業の知り合いに聞く
次は税理士以外の士業の知り合いに聞くことについてです。
税理士は必ず他の士業と連携して仕事をしています。相続に関する税務であれば、相続した不動産の登記名義は亡くなった方から相続した配偶者や子供などに変更しますので司法書士と連携します。相続財産の評価において不動産鑑定士と連携する場合もあります。
なので、もしも知り合いに司法書士や不動産鑑定士などの士業の人あるいはこれら士業の事務所で働いている人がいれば、相続税申告の取り扱いが多い税理士は誰か聞いてみてください。
実際に会ってみる
最後に頼るべきはあなた自身の印象です。なので実際に会ってお話をしてみてください。
税務の経験のみならず、なぜ税理士を志したのか、趣味は何かなどです。
相続の税務は結構時間がかかる場合があります。例えば全ての相続人を特定し住所を調べて連絡しなければいけないのですが、中には安否や行方が不明な方もおられたりして、単に事務所で書類を精査しただけでは終わらないことも多いのです。
時間がかかるということは、その間違和感なくお付き合いできそうな税理士であるのが理想的です。
また、相続には喜・怒・哀・楽など様々な人間模様がからんできますので、できれば税理士には「良き聞き役」であることも求められるでしょう。
税理士の実務経験はもちろんのこと、その「人となり」もとても重要だということになります。そして、こればかりはウェブサイトや伝聞だけではわかりません。
まとめ
以上、相続税の申告の際にどの税理士に相談するかを決める時の参考になれば幸いです。
それでももしもお困り・ご不安であれば、お問い合わせメールをいただければ相続に関する評価を多数ご依頼いただいている税理士をご紹介させていただきます。