住宅着工戸数 2020年7月
住宅着⼯⼾数データ
7⽉の住宅着⼯⼾数は70,232⼾で前年同⽉⽐▲11.4%、季節調整済年率換算では前⽉⽐+4.8%でした。
このデータはさらに「利⽤関係」によって内訳が示されています。
前年同期比 | 季節調整済 前月比 | |
持家 | ▲13.6% | +0.5% |
貸家 | ▲8.9% | +8.2% |
分譲住宅 | ▲11.8% | +5.8% |
前年同⽉⽐で見ると持家は12か⽉連続の減少、貸家は23か⽉連続の減少、分譲住宅は9か月連続の減少です。分譲住宅については前年同月比データのみ分譲マンション・分譲一戸建住宅の内訳が公表されており、マンションが▲2.9%、戸建住宅が▲17.2%でした。
データの⾒⽅
前年同月比で見ると持家・貸家・分譲住宅のいずれも減少していますが、よりトレンドの変化を素早く反映する季節調整済前月比ではいずれもプラスとなっています。
前年同月比は消費税増税前の2019年7月と消費税増税後の2020年7月の数字の比較ですのである程度の減少はやむを得ないでしょう。一方、季節調整済前月比は持家・貸家・分譲住宅ともにプラスに転じており、前月との比較では回復しています。
7月の着工分は契約が5~6月のものが中心となり、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が全国的に解除されたのが5月25日ですから、モデルハウスへの外出など商談が回復してきた結果と考えられます。
先行きについては、7月下旬からは政府のGoToキャンペーンなどの施策により景気に対する不安感が払しょくされつつあるなど明るい兆しも見られますが、感染症の拡大は一進一退で予断を許しません。
利用関係別では、持家については7月の失業率が2.9%と6月よりわずかに悪化したものの有効求人倍率が1.08倍で6月よりさらに悪化しており、雇用・所得環境の悪化により需要者層が住宅ローンを借りて持家を建てることをためらうことの影響が危惧されます。
貸家は、一昨年(2018年)からの投資用物件にかかわるサブリース業者の破綻や違法建築など一連の不祥事の悪影響は一巡していますが、先行きの見通しとしては貸家購入ローンの申請に関する書類の偽造など新たな不祥事が2020年1月に報道されており、この問題が再度クローズアップされるとより一層金融機関が融資に慎重になり今後の着工に影響を及ぼす可能性があります。新型コロナウイルスによる収入の減少が入居者の賃料支払能力を低下させるとの懸念から、新たに賃貸物件を建築することをためらう動きも出てくるでしょう。
分譲住宅については、新型コロナウイルスの影響でマンション・建売業者の既存在庫の商談が減って売れ行きが低迷すると、資金繰りや売れ行き見通しの悪化懸念から新規物件の着工を抑制する可能性があり要注意です。
以上をまとめると、データとしては持家・貸家・分譲住宅とも前年比では消費税増税の影響が見られるものの、5月の緊急事態宣言の解除を受けて回復に向かいつつあります。ただ、雇用環境は依然厳しく本格的な回復が見通せる状況ではありません。