住宅着工戸数 2020年6月

住宅着⼯⼾数データ

6⽉の住宅着⼯⼾数は71,101⼾で前年同⽉⽐▲12.8%、季節調整済年率換算では前⽉⽐▲2.1%でした。

このデータはさらに「利⽤関係」によって分類して内訳が示されています。

あなたが⼯務店に家を建ててもらった後に⾃分で住む予定であれば「持家」、テナントを募集して賃貸する予定であれば「貸家」、あなたがマンション開発業者や建売業者で建てたマンション・家を販売する予定であれば「分譲住宅」になります。

この利⽤関係でみたのが以下の表です。

前年同月比季節調整済
前月比
持家▲16.7%+4.9%
貸家▲13.0%▲8.1%
分譲住宅▲7.7%▲2.5%

前年同⽉⽐で見ると持家は11か⽉連続の減少、貸家は22か⽉連続の減少、分譲住宅は8か月連続の減少です。分譲住宅については前年同月比データのみ分譲マンション・分譲一戸建住宅の内訳が公表されており、マンションが▲2.0%、戸建住宅が▲11.0%でした。

データの⾒⽅

前年同月比で見ると持家・貸家・分譲住宅のいずれも減少していますが、よりトレンドの変化を素早く反映する季節調整済前月比ではプラス・マイナスがいりまじっています。

前年同月比は消費税増税前の2019年6月と消費税増税後の2020年6月の数字の比較ですのである程度の減少はやむを得ないでしょう。一方、季節調整済前月比は分譲住宅がプラスに転じる一方で5月はプラスだった貸家が再びマイナスに転じています。

6月の着工分は契約が4~5月のものが中心となり、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が全国的に解除されたのが5月25日ですから、モデルハウスへの外出を控える方がまだ多く商談が減少するなどしていた影響が残っていたものと考えられます。

先行きについては緊急事態宣言の解除が先行39県が5月14日、全面解除が5月25日で、契約してから実際に着工するまでには2か月程度を要しますので、7月頃までは低迷が続くかも知れませんがその後は回復も期待できます。

利用関係別では、持家については6月の失業率が2.8%と5月よりわずかに改善したものの有効求人倍率が1.11倍で過去2番目の落ち込みだった5月よりさらに悪化しており、雇用・所得環境の悪化により需要者層が住宅ローンを借りて持家を建てることをためらうことの影響が危惧されます。

貸家は、一昨年(2018年)からの投資用物件にかかわるサブリース業者の破綻や違法建築など一連の不祥事の悪影響は一巡していますが、先行きの見通しとしては貸家購入ローンの申請に関する書類の偽造など新たな不祥事が2020年1月に報道されており、この問題が再度クローズアップされるとより一層金融機関が融資に慎重になり今後の着工に影響を及ぼす可能性があります。新型コロナウイルスによる収入の減少が入居者の賃料支払能力を低下させるとの懸念から、新たに賃貸物件を建築することをためらう動きも出てくるでしょう。

分譲住宅については、新型コロナウイルスの影響でマンション・建売業者の既存在庫の商談が減って売れ行きが低迷すると、資金繰りや売れ行き見通しの悪化懸念から新規物件の着工を抑制する可能性があり要注意です。

以上をまとめると、データとしては持家・貸家・分譲住宅とも前年比では消費税増税の影響が見られ、新型コロナウイルスの影響については商談が減少する、工事のための人繰りがつかなくなる、サプライチェーンの寸断により建設資材の確保が難しくなる、収益見通しへの不安から賃貸物件新築意欲が低迷する、開発・建売業者の資金繰りが悪化する、などの要因から持家・貸家・分譲住宅の全てについてマイナス材料ということになりますが、5月の緊急事態宣言の解除を受けて来月以降は回復に向かう可能性もあります。