住宅着工戸数 2020年1月

住宅着⼯⼾数データ

1⽉の住宅着⼯⼾数は60,341⼾で前年同⽉⽐▲10.1%、季節調整済年率換算では前⽉⽐▲4.6%でした。

前年同⽉⽐と季節調整済の違い

前年同⽉⽐と季節調整済の違いを解説します。

データはできれば前⽉のものと比べた⽅が⽅向性の⾒極めがしやすくなりますので、6⽉のデータであれば5⽉のものと比べるのがベストです。

でもデータには季節性があります。単純に考えても2⽉は28⽇間しかないのでデータを加⼯しなければ他の⽉よりも値が⼩さくなる可能性があります。また、リゾート地のホテルの稼働率は夏休みのある7・8⽉が高くなる可能性が⾼いので、8⽉と比べて9⽉が⼤幅に下がったと⾔っても条件が違います。今年は例年より台風が多かった、といった天候の影響もあるでしょう。

これに対処する⽅法その①が前年同⽉⽐です。前の年の同じ⽉と比べているので、2⽉なら2⽉どうしで両⽅とも28⽇間(閏年は29⽇間になりますが)で比較するため⽇数差が消去されます。

前年同⽉⽐の利点は実際のデータがそのまま使えて単純であること、⽋点は暦以外の条件は調整されないこと、⻑期上昇トレンドの後に⾜元のデータが下降に向かい始めていても前の年のデータと比較しているためにトレンドの変化に気づかない可能性があることです。

これに対処する⽅法その②が季節調整です。調整の⽅法はデータや調査主体によって違いますが⽉による⽇数の差や閏年などの暦の条件、天候などの⾃然条件、夏休みなどの制度・慣⾏にかかわる条件を調整して前⽉のデータと⽐較できるようにデータを加⼯します。

季節調整の利点は前⽉のデータと比較しているので⻑期上昇トレンドの後で⾜元のデータが下降に向かい始めている場合にトレンドの変化に気づきやすいこと、⽋点は調整の計算が複雑になる上にどのように調整しても完璧にはならないことです。

データ内訳

冒頭の住宅着⼯⼾数のデータはより細かく内容がわかるように「利⽤関係」によって分類して内訳が示されています。

あなたが⼯務店に家を建ててもらった後に⾃分で住む予定であれば「持家」、テナントを募集して賃貸する予定であれば「貸家」、あなたが不動産開発を⼿掛けていて建てた家を販売する予定であれば「分譲住宅」になります。

この利⽤関係でみたのが以下の表です。

前年同⽉⽐ 季節調整済
前月比
持家▲13.8%▲5.4%
貸家▲2.5%+1.1%
分譲住宅▲14.6%▲9.3%

前年同⽉⽐で見ると持家は6か⽉連続の減少、貸家は17か⽉連続の減少、分譲住宅は3か月連続の減少です。分譲住宅については前年同月比データのみ分譲マンション・分譲一戸建住宅の内訳が公表されており、マンションが▲27.5%、戸建住宅が▲2.8%でした。

データの⾒⽅

前年同月比で見ると持家・貸家・分譲住宅がいずれも減少していますが、よりトレンドの変化を素早く反映する季節調整済前月比を見ると持家・分譲住宅は減少した一方で貸家はわずかな増加となっています。

1月の着工分はほぼ昨年12月以前の契約分と考えられますので、消費税増税の影響はあるもののコロナウイルスの影響はまだ顕在化していないものと思われますが、比較対象データである昨年12月着工分が11月以前の契約分と考えられやはり消費税増税の影響を既にうけていることを考慮すると、持家・分譲住宅の5~10%のマイナスは増税後契約分の着工データ同士で比較しても減少傾向ということで気になります。

先行きを考えると今年は閏年で2月は日数が1日多いのですが、まず持家については特に月後半はコロナウイルスの影響で商談が減少していると思われます。

貸家は、一昨年(2018年)からの投資用物件にかかわるサブリース業者の破綻や違法建築など一連の不祥事の悪影響が一巡してきた兆しがありますが、先行きの見通しとしては貸家購入ローンの申請に関する書類の偽造など新たな不祥事が2020年1月に報道されており、この問題が再度クローズアップされるとより一層金融機関が融資に慎重になり2月以降の契約分、つまり3月以降の着工に影響を及ぼす可能性があります。

分譲住宅については、コロナウイルスの影響でマンション・建売業者の既存在庫の商談が減って売れ行きが低迷すると、資金繰りや売れ行き見通しの悪化懸念から新規物件の着工を抑制する可能性があり要注意です。

以上をまとめると、データとしては持家・分譲住宅は厳しいものとなっており、貸家は一旦落ち着いたものの新たな融資抑制の可能性があり要注意です。またコロナウイルスは商談が減少する、工事のための人繰りがつかなくなる、サプライチェーンの寸断により建設資材の確保が難しくなる、などの懸念から持家・貸家・分譲住宅の全てについてマイナス材料ということになります。