住宅着工戸数 2019年12月

住宅着⼯⼾数データ

12⽉の住宅着⼯⼾数は72,174⼾で前年同⽉⽐▲7.9%、季節調整済年率換算では前⽉⽐+0.5%でした。

前年同⽉⽐と季節調整済の違い

前年同⽉⽐と季節調整済の違いを解説します。

データはできれば前⽉のものと比べた⽅が⽅向性の⾒極めがしやすくなりますので、6⽉のデータであれば5⽉のものと比べるのがベストです。

でもデータには季節性があります。単純に考えても2⽉は28⽇間しかないのでデータを加⼯しなければ他の⽉よりも値が⼩さくなる可能性があります。また、リゾート地のホテルの稼働率は夏休みのある7・8⽉が高くなる可能性が⾼いので、8⽉と比べて9⽉が⼤幅に下がったと⾔っても条件が違います。今年は例年より台風が多かった、といった天候の影響もあるでしょう。

これに対処する⽅法その①が前年同⽉⽐です。前の年の同じ⽉と比べているので、2⽉なら2⽉どうしで両⽅とも28⽇間(閏年は29⽇間になりますが)で比較するため⽇数差が消去されます。

前年同⽉⽐の利点は実際のデータがそのまま使えて単純であること、⽋点は暦以外の条件は調整されないこと、⻑期上昇トレンドの後に⾜元のデータが下降に向かい始めていても前の年のデータと比較しているためにトレンドの変化に気づかない可能性があることです。

これに対処する⽅法その②が季節調整です。調整の⽅法はデータや調査主体によって違いますが⽉による⽇数の差や閏年などの暦の条件、天候などの⾃然条件、夏休みなどの制度・慣⾏にかかわる条件を調整して前⽉のデータと⽐較できるようにデータを加⼯します。

季節調整の利点は前⽉のデータと比較しているので⻑期上昇トレンドの後で⾜元のデータが下降に向かい始めている場合にトレンドの変化に気づきやすいこと、⽋点は調整の計算が複雑になる上にどのように調整しても完璧にはならないことです。

データ内訳

冒頭の住宅着⼯⼾数のデータはより細かく内容がわかるように「利⽤関係」によって分類して内訳が示されています。

あなたが⼯務店に家を建ててもらった後に⾃分で住む予定であれば「持家」、テナントを募集して賃貸する予定であれば「貸家」、あなたが不動産開発を⼿掛けていて建てた家を販売する予定であれば「分譲住宅」になります。

この利⽤関係でみたのが以下の表です。

前年同⽉⽐季節調整済
前⽉⽐
持家▲8.7%▲1.7%
貸家▲10.3%▲0.4%
分譲住宅▲5.1%+2.4%

前年同⽉⽐で見ると持家は5か⽉連続の減少、貸家は16か⽉連続の減少、分譲住宅は2か月連続の減少です。分譲住宅については前年同月比データのみ分譲マンション・分譲一戸建住宅の内訳が公表されており、マンションが▲6.2%、戸建住宅が▲4.3%でした。

データの⾒⽅

前年同月比で見ると持家・貸家・分譲住宅がいずれも減少していますが、よりトレンドの変化を素早く反映する季節調整済前月比を見ると持家・貸家・分譲住宅ともわずかな増減にとどまっています。

12月の季節調整済み前月比は比較対象が前月11月のデータで、11月着工分は消費増税の影響を受けたデータと考えられますので、これが微増減である一方前年同月比(前年の12月と本年の12月の比較)が5~10%前後のマイナスですので、概ね消費増税の影響が11月に出て着工が減った後は横ばい傾向であるものと見て取れます。

貸家の季節調整済前月比はほぼ横ばいで、一昨年(2018年)からの投資用物件にかかわるサブリース業者の破綻や違法建築など一連の不祥事の悪影響が一巡してきた兆しがあります。ただ、先行きの見通しとしては貸家購入ローンの申請に関する書類の偽造など新たな不祥事が2020年1月に報道されており、この問題が再度クローズアップされるとより一層金融機関が融資に慎重になり2月以降の貸家の着工に影響を及ぼす可能性もあります。

以上をまとめると、データとしては持家・貸家・分譲住宅のいずれも横ばい傾向、貸家については新たな融資抑制の要因があり要注意、ということになります。