首都圏マンション市場 2019年12月

不動産経済研究所の⽉次データの発表です。

⾸都圏での新築マンションの発売⼾数は前年同⽉⽐で▲14.3%の6,392戸でした。契約率(発売したマンションが成約に⾄った率)は61.3%で先月より上昇したものの、好不調の分かれ目と⾔われる70%を4か月連続で下回りました。1⼾当たり価格は5,876万円、㎡単価は83.9万円でそれぞれ前年同⽉⽐▲0.3%、▲2.7%となりました。

数量ベース、価格ベースのデータ(総額・単価)ともにマイナスですので、市況は悪化しています。ただし10月に消費税増税があったことを考えると想定の範囲内でしょう。価格が下がった分、契約率は10月の42.6%からかなり持ち直しています。

労働需給は全体としては引き続き人手不足感があり失業率は低位安定していますが、有効求人倍率(季節調整済み)は5月以降下落基調です。米中貿易摩擦の激化による景気悪化観測はやや後退したものの、⼤企業を中⼼にIT化による⼈員の削減(配置転換・新規採⽤の抑制による⾃然減を含む)などの雇用構造の転換が将来の所得環境に対する不安を生み、これが住宅ローンを組んでマイホーム購入をためらうという状況が販売に影響を及ぼしている可能性は否定できません。

また、金融機関を取材すると最近首都圏で建設・不動産業の資金繰りが悪化し始めているというお話を耳にします。

不動産開発業者の場合、実際に開発中の物件がまだ売却されていなくても工事の進捗にあわせて売上を計上する「工事進行基準」という売上認識の方法が認められていて、売り上げはある、利益も出ている、でも決算の見かけほど資金繰りが良くない、というケースは起こり得ます。

マンション開発業者が資金繰り難から経営破綻すると、契約金は支払ったのに購入物件の引き渡しが受けられないという事態も起こり得ますので、購入をためらう人も出てくるでしょう。

また、開発業者の資金繰りが悪化すれば建設会社も工事請負代金を支払ってもらえなくなるので影響が連鎖します。建設会社が資金繰りに困りだすとマンションの供給力が下がってくることも考えられます。

契約率がこのまま回復基調をたどりマンション市場の好不調の目安とされる70%を超えるかどうか、今後も要注意です。