住宅着工戸数 2019年9月

住宅着⼯⼾数データ

9⽉の住宅着⼯⼾数は77,915⼾で前年同⽉⽐▲4.9%、季節調整済年率換算では前⽉⽐+0.7%でした。

前年同⽉⽐と季節調整済の違い

前年同⽉⽐と季節調整済の違いを解説します。

データはできれば前⽉のものと比べた⽅が⽅向性の⾒極めがしやすくなりますので、6⽉のデータであれば5⽉のものと比べるのがベストです。

でもデータには季節性があります。単純に考えても2⽉は28⽇間しかないのでデータを加⼯しなければ他の⽉よりも値が⼩さくなる可能性があります。また、リゾート地のホテルの稼働率は夏休みのある7・8⽉が高くなる可能性が⾼いので、8⽉と比べて9⽉が⼤幅に下がったと⾔っても条件が違います。今年は例年より台風が多かった、といった天候の影響もあるでしょう。

これに対処する⽅法その①が前年同⽉⽐です。前の年の同じ⽉と比べているので、2⽉なら2⽉どうしで両⽅とも28⽇間(閏年は29⽇間になりますが)で比較するため⽇数差が消去されます。

前年同⽉⽐の利点は実際のデータがそのまま使えて単純であること、⽋点は暦以外の条件は調整されないこと、⻑期上昇トレンドの後に⾜元のデータが下降に向かい始めていても前の年のデータと比較しているためにトレンドの変化に気づかない可能性があることです。

これに対処する⽅法その②が季節調整です。調整の⽅法はデータや調査主体によって違いますが⽉による⽇数の差や閏年などの暦の条件、天候などの⾃然条件、夏休みなどの制度・慣⾏にかかわる条件を調整して前⽉のデータと⽐較できるようにデータを加⼯します。

季節調整の利点は前⽉のデータと比較しているので⻑期上昇トレンドの後で⾜元のデータが下降に向かい始めている場合にトレンドの変化に気づきやすいこと、⽋点は調整の計算が複雑になる上にどのように調整しても完璧にはならないことです。

データ内訳

冒頭の住宅着⼯⼾数のデータはより細かく内容がわかるように「利⽤関係」によって分類して内訳が示されています。

あなたが⼯務店に家を建ててもらった後に⾃分で住む予定であれば「持家」、テナントを募集して賃貸する予定であれば「貸家」、あなたが不動産開発を⼿掛けていて建てた家を販売する予定であれば「分譲住宅」になります。

この利⽤関係でみたのが以下の表です。

前年同⽉⽐季節調整済
前⽉⽐
持家▲3.5%▲0.2%
貸家▲16.8%▲3.2%
分譲住宅+14.1%+6.5%

持家は2か⽉連続の減少、貸家は13か⽉連続の減少、分譲住宅は4か⽉連続の増加(いずれも前年同⽉⽐)ですので貸家の不調が目⽴っている上に持家も微減に転じるなか、分譲住宅が増加基調を維持しています。

データの⾒⽅

持家は2か⽉連続の減少となりました。異次元緩和政策が継続しているため本来ならば依然として有利な融資条件でローンが組めるものと思われ、更に消費税造成前の最後の月だったのです、米中貿易摩擦の長期化に伴う企業業績の悪化や有効求人倍率の低下基調などを踏まえ、将来の雇⽤・所得環境に対する不安が増えているのでしょうか。

⼀⽅貸家、つまり投資⽤物件では昨年からサブリース業者の破綻や違法建築などの不祥事が発覚しており営業環境が悪化している上に、融資審査の厳格化がはかられていることが影響しているものと思われます。当局も金融機関には指導を通じて事業向けには運転資金の融資への回帰を求めているようです。

本来自己居住物件用の固定金利型住宅ローンであるフラット35を不正に申請して投資用物件の取得資金に充てていた事件も尾を引いていると思われ、年内は投資用物件への融資環境は厳しい状態が続きそうです。

分譲住宅は3か月減少した後4か月連続の増加となっています。

うち、分譲⼀⼾建住宅は微増の+0.1%ですが、分譲マンションは+34.6%と大幅増です(いずれも前年同⽉⽐)。

以上をまとめると、分譲住宅とくに分譲マンションが好調な中、持家が小休止、投資用物件である貸家が不調となっています。ただ、貸家も季節調整済前月比では下落率は小さくなってきており、トレンドの転換を示している可能性もあります。