住宅着工戸数 2019年7月

住宅着⼯⼾数データ

7⽉の住宅着⼯⼾数は79,232⼾で前年同⽉⽐▲4.1%、季節調整済年率換算では前⽉⽐▲1.3%でした。

前年同⽉⽐と季節調整済の違い

まず前年同⽉⽐と季節調整済の違いを解説します。

データはできれば前⽉のものと比べた⽅が⽅向性の⾒極めがしやすくなりますので、6⽉のデータであれば5⽉のものと比べるのがベストです。

でもデータには季節性があります。単純に考えても2⽉は28⽇間しかないのでデータを加⼯しなければ他の⽉よりも値が⼩さくなる可能性があります。また、リゾート地のホテルの稼働率は夏休みのある7・8⽉が高くなる可能性が⾼いので、8⽉と比べて9⽉が⼤幅に下がったと⾔っても条件が違います。今年は例年より台風が多かった、といった天候の影響もあるでしょう。

これに対処する⽅法その①が前年同⽉⽐です。前の年の同じ⽉と比べているので、2⽉なら2⽉どうしで両⽅とも28⽇間(閏年は29⽇間になりますが)で比較するため⽇数差が消去されます。

前年同⽉⽐の利点は実際のデータがそのまま使えて単純であること、⽋点は暦以外の条件は調整されないこと、⻑期上昇トレンドの後に⾜元のデータが下降に向かい始めていても前の年のデータと比較しているためにトレンドの変化に気づかない可能性があることです。

これに対処する⽅法その②が季節調整です。調整の⽅法はデータや調査主体によって違いますが⽉による⽇数の差や閏年などの暦の条件、天候などの⾃然条件、夏休みなどの制度・慣⾏にかかわる条件を調整して前⽉のデータと⽐較できるようにデータを加⼯します。

季節調整の利点は前⽉のデータと比較しているので⻑期上昇トレンドの後で⾜元のデータが下降に向かい始めている場合にトレンドの変化に気づきやすいこと、⽋点は調整の計算が複雑になる上にどのように調整しても完璧にはならないことです。

データ内訳

冒頭の住宅着⼯⼾数のデータはより細かく内容がわかるように「利⽤関係」によって分類して内訳が示されています。

あなたが⼯務店に家を建ててもらった後に⾃分で住む予定であれば「持家」、テナントを募集して賃貸する予定であれば「貸家」、あなたが不動産開発を⼿掛けていて建てた家を販売する予定であれば「分譲住宅」になります。

この利⽤関係でみたのが以下の表です。

前年同⽉⽐季節調整済
前⽉⽐
持家+3.3%▲6.6%
貸家▲15.2%▲2.8%
分譲住宅+5.1%+3.8

持家は10か⽉連続の増加、貸家は11か⽉連続の減少、分譲住宅は2か⽉連続の増加(いずれも前年同⽉⽐)ですので貸家の不調が目⽴っているものの持家は堅調な上に分譲住宅も回復しています。

データの⾒⽅

持家は引き続き堅調です。異次元緩和政策が継続しており依然として有利な融資条件でローンが組めるからだと思われます。雇⽤・所得環境が安定していることも寄与しているでしょう。

⼀⽅貸家、つまり投資⽤物件では昨年からサブリース業者の破綻や違法建築などの不祥事が発覚しており営業環境が悪化している上に、融資審査の厳格化がはかられていることが影響しているものと思われます。

本来自己居住物件用の固定金利型住宅ローンであるフラット35を不正に申請して投資用物件の取得資金に充てていた事件では新たに不正利用の可能性のある案件が49件浮上したともメディアで報じられており(8月30日)、当面は投資用物件への融資環境は厳しい状態が続きそうです。

分譲住宅は3か月減少した後2か月連続の増加となっています。

うち、分譲⼀⼾建住宅が増加に転じて+8.9%となっている一方、分譲マンションは▲1.1%と微減に転じています(いずれも前年同⽉⽐)。

以上をまとめると、最終需要はエンドユーザーである持家・分譲住宅が好調な一方、投資用物件である貸家が不調となっています。ただ、貸家も季節調整済前月比では下落率は小さくなっており、トレンドの転換を示している可能性もあります。