街並みを整える建築協定【不動産鑑定士が解説します】

物件の購入を検討しているときに不動産屋さんから「ここは建築協定があります」と言われたことはありませんか?

建築協定は、街並みを整えるために法律(国会で決める)や条例(地方議会で決める)によらずに地権者が自らどのような建物を建てることができる(できない)かを決める制度です。

以下解説します。

建築協定の制度

何を決められるか

建築協定については建築基準法に「何を」「どのようにして」決めるかが定められています。

何を決められるかと言うと、建築物の

  • 敷地
  • 位置
  • 構造
  • 用途
  • 形態
  • 意匠
  • 設備

についての基準です。

法律や条例は最低限のルールで、本当はもっといろんなことを定めたくても個人の自由意思を侵害してはいけないので「そこそこのところ」でとどめてあります。

でも、地権者が自らの自由意思にもとづく合意により街並みを整えるために必要なことをきめられる余地を残しているのです。

誰が決めるか

地権者が決めます。具体的には土地の所有者及び建物を所有するための借地権を有する人たちです。

どのエリアで決められるか

条例で「このエリアは地権者の合意で建築協定を結んでももいいですよ」と決められたエリアです。なのでこのエリアに入っていなければまず条例で建築協定を結べるエリアに指定してもらわないといけません。

そしてこのエリアに入っていれば、その一部の範囲についてであっても建築協定を結べます。

どのようにして決めるか

どのようにして決めるかと言うと、地権者全員の合意によってです。

なぜ多数決ではなく全員の合意が必要かと言うと、例えば10人の地権者がいるエリアで1人だけ家の壁の色がブルーだったとします。そこでもし「家の壁の色はブルーはダメ」と決めてしまうと9人は特に問題がないので賛成してもこの人は困りますよね?

いったん決めてしまうと決定的に効力をもつので、少数者が排除されることがないように1人でも反対する人がいればダメなのです。

この場合は内容を見直すかその人の土地を建築協定の範囲外にすればいいわけです。

建築協定を結んだら

建築協定を結んだら都道府県や市町村及び都道府県知事や市町村長(特定行政庁といいます)にそれを提出します。

先ほどの通り、いったん決めてしまうと決定的に効力をもつので、本当に問題がないかの確認の手順をふむためです。

建築計画は関係人が縦覧し、公開で意見を聞いた上でこれを認可します。

建築協定を結ぶには協定が及ぶ範囲内の地権者全員の合意が必要なので、1人でも反対の人がいれば認可されません。

そして認可される公告され、決定的に効力が生まれます。

建築協定の公告後に地権者となった人、例えば土地を購入した人も建築協定に従わなければなりません。

だから冒頭のように不動産屋さんがあなたに「ここは建築協定があります」と伝えたわけです。「建築基準法などの法律以外にも建物の建築について特別な取り決めがありますけどよろしいですか?」という確認だったのです。

建築協定を変えたりなくしたりするには

例えば30年前に結ばれた建築協定が、当時はとてもいい案だったとしても時代にあわなくなることってあり得ますよね?

なので建築協定は変更や廃止をすることができます。

建築協定を変更するためには建築協定の効力が及ぶ範囲の全ての地権者の同意が必要です。

最初に建築協定を結んだ時と同じで、少数者が排除されないようにしています。

建築協定を廃止するには地権者の過半数(1/2を超える数)の同意が必要です。

廃止に全員の同意が不要なのは、どうしても廃止したくない人たちはその人たちだけが集まって新たに建築協定を結べばいいからです。

建築協定は1人でも結べる

建築協定はそれを結ぼうとする範囲の地権者全員の合意があれば決められるので、1人でも結ぶことができます。

でも、なんかピンときませんよね?

だって、壁の色がブルーはダメ、ってわざわざ協定で決めなくても自分でそれ以外の色にすれば済むことですから・・・

この制度、何のためにあるかと言うと、いったん街ができてしまうと全員の合意を得るのが大変ですよね。

でも、例えば50区画の土地を造成して建売住宅を販売しようと考えている開発業者が1人で建築協定を結べばその効力はこの解発業者が50戸を全て分譲した後も効力があるので、整った街並みが維持されることになると思いませんか?

つまり、この制度(1人協定と言います)によって建築基準法の規制では不十分だと考える街並みコンシャスな人たちに向けた物件の開発ができるようになるのです。

なので、この場合には建築協定を結んでから3年以内に地権者が2人以上になった時、つまり1戸でも分譲した時に初めて効力が生じることになっています。

まとめ

建築協定は街並みを整えるために有効な手段なのですが、一方で国会や地方議会に諮らずに当事者間の合意で土地利用を制約するものなので、締結には厳しい要件や手順が求められています。

地権者が自分たちで優れた街並みをつくる権利と、その結果地権者の土地利用が制約されることで損なわれるかもしれない権利の保護をバランスさせる制度なのです。