高圧線の下に建物は建つか?【不動産鑑定士が解説します】

家庭に電気を供給するためには高圧線が必要です。

高圧線というと電車に乗っていて農地やくさむら、山林などに送電用の鉄塔がある光景を思い浮かべがちですが、市街地にも高圧線網は張り巡らされています。

高圧線に近接する土地は通常地域の相場より安い場合が多いので購入を検討される方もおられるかと思いますが、建物の建築については基準などが定められていますので解説します。

高圧線を設置する場合の基準

電力会社が高圧線を設置する場合の基準は、経済産業省が定めています。

まず高圧線を設置できる範囲ですが、使用電圧が17万V以下の場合と17万V超の場合で違います。

17万V以下の場合には電線そのものからの建物までの距離(離隔距離といいます)が制限されています。一方、17万V超の場合には電線そのものからの建物までの距離(離隔距離)に加え、電線の真下からの建物までの距離(水平下離隔距離といいます)も制限されています。

これを示したのが下の図です。

17万V以下の場合
17万V超の場合

いずれの場合にもこの一番外側の赤い点線の範囲内に建物が入るような場所への高圧線の設置はできません。

離隔距離、水平下離隔距離は高圧線の使用電圧により定められていますが細かくなるので割愛します。

高圧線の周囲に建物を建てる場合

以上で見てきたのは経済産業省が電力会社に対して高圧線を設置する場合の基準です。つまりまず建物があって、その周辺に高圧線を設置する場合にはこれだけの範囲の建物を回避するようにしなさいよ、ということです。

では、既に高圧線が設置されている場所に建物を建てる場合はどうなるのでしょうか?

上記の基準は建物の安全を確保するための者ですので、既に高圧線が設置されている周辺に建物を建てる場合も同様の扱いとなりますが、基準の順守を担保するために土地について地役権の登記がなされていることが多いです。

その例を下に示します。

つまり、電力会社が高圧線を設定し維持管理することと、その支障となるような建物の建築や植物の植栽を禁止することに合意したということを登記に記録しているのです。

登記とは土地・建物に関する広さ・用途などの状態や、さまざまな権利に関する事柄をその土地・建物について利害関係をもとうとする人たちに周知するために行うものです。

「この土地についている権利はこのようなものですよ」と表示して登記情報を取得すれば誰でも知ることができるようになっているのです。

なぜこのような表示が必要かと言うと、売買などで所有者が変わってもその登記が抹消されない限り登記された新しい所有者に引き継がれます。

上の例で言えば、電力会社が高圧線を維持するために土地に立ち入ったり、その支障となるような建物の建築や植物の植栽を禁止するけんりがあって、これが登記されていて、売買されてもその東京電力の権利は新所有者に引き継がれるのです。

なので、その土地の購入を検討している人が土地にそのような権利がついてくるということを購入前に知ることができるようにするために登記の制度があるのです。

まとめ

以上、高圧線の周囲であっても経済産業省が定めた基準の範囲外で、かつ土地の登記に記録された地役権などの目的に抵触しなければ、建物を建築することが可能です。

管轄の電力会社で建物建築に関する基準やその実際の運用を調査し、登記された事項を確認などした上で購入を検討してください。