境界杭・プレート・鋲が見つからなくてもあなたの土地を確定する方法【不動産鑑定士・測量士補が解説します】
あまたの土地はどこまでかを地積測量図を使ってコンクリート杭、金属プレート、鉄鋲を頼りに確認する方法は以前解説しました。
では、杭やプレート・鋲が見つからない場合にはどうしたら良いいのでしょうか?
この場合には座標値を使って杭・プレート・鋲の場所を復元することとなりますので、以下に解説します。
土地と座標
座標のことを少し思い出しましょう
昔、数学の授業で座標について学んだ記憶をたどってください。難しいことは言いませんのでご心配なく。
横軸がX、縦軸がY、X軸とY軸が直角に交わっていてその場所が原点O。X軸は右に行くとプラスで左に行くとマイナス、Y軸は上に行くとプラスで下に行くとマイナス。
原点の座標は(0,0)で、原点から右に3、上に2行ったところにある点の座標は(3,2)、原点から左に5、下に6行ったところにある点の座標は(-5,-6)などなど。
XとYの値が決まれば、必ずピンポイントで座標上の点の位置が決まります。
あなたの土地の座標
地積測量図が最近作られたものであれば、土地の境界杭・プレート・鋲の座標値が記載されています。
地番と言うのがあなたの土地に登記上付された番号、スポーツ選手の背番号のようなものです。同じチームに同じ背番号の選手が2人いないように、同じ所在に同じ地番の土地が2筆(土地の登記上の単位を「筆」といいます)あるということはありません。
NOというのは地積測量図に載っていてあなたの土地の境界の判定に役立つコンクリート杭や金属プレート、鉄鋲の1つ1つに振られた番号や記号です。
そのコンクリート杭や金属プレート、鉄鋲が見つからないから困っているわけですが、それぞれの杭・プレート・鋲に対してXn、Ynというものが記録されています。
これがその杭・プレート・鋲の座標値なのです。
先ほどX、Yが決まれば座標上の点の位置がピンポイントで決まると言いましたが、地積測量図には杭・プレート・鋲のX、Yの値が記録されているので、杭・プレート・鋲がみつからなくてもそれらが当初あった位置をピンポイントで確定することができます。
このように「後になってもその位置がどこだったか確定できる」という性質を「復元性」と呼んでいます。元に復することができる性質、の意味です。
杭・プレート・鋲の座標値の記された地積測量図があれば、それらの位置が復元できるのです。
日本経緯度原点
この地積測量図に載っているXn、Ynの数字ですが、どこを基準にしているかというと「日本経緯度原点」です。東京都港区にあります。
「では東京都港区からすごく遠い土地の杭・プレート・鋲の座標値を測定するのは大変ではないか」と思われるかもしれませんが、心配無用です。
注意して道を歩くとこのようなものをみかけることがあります。
これは国土交通省、つまり国が設置した「3級基準点」です。何の基準になるのかというと「座標」の基準です。
東京都が設置したものもあります。
千代田区が設置したものもあります。
このように、日本経緯度原点を出発点として国や地方自治体が設置した測量の基準となる点が全国に多数存在してそれらのX、Yの座標値が分かっているので、その中からあなたの土地に近いものを選んでそこを起点に測り始めるとあなたの土地がどこかを示す杭・プレート・鋲の座標値がわかるのです。
これが先ほどの地積測量図のXn、Ynです。
そして、あなたの土地の近隣にあってあなたの土地がどこかを示す杭・プレート・鋲の座標値を求める基準となった点がどのような点だったかを記したのが地積測量図のうち下に抜粋した部分です。
○○市△△課が測量して設置した基本三角点等を基準にしましたよ、と言っています。点名は実際に使った点を特定する番号で、X座標、Y座標はそれらの点の座標値です。
まとめ
あなたの土地は「ここ」だと特定しようにも、境界の基準となるコンクリート杭や金属プレート、鉄鋲などが必ず現存するとは限りません。
道路工事や塀の設置工事、造園などの際に誤って撤去されて復元されずにそのまま放置されている、というのは実際に起こりうることです。
そのような場合であっても、杭・プレート・鋲の座標値が地積測量図に記載されていれば、この座標値によって杭・プレート・鋲の位置を復元することができます。
そしてあなたの土地は「ここ」だと特定できるのです。
ただし、全ての土地について法務局という役所に地積測量図が備え付けられているわけではありませんし、昔の地積測量図には座標値の記載のないものもあります。
もしもあなたの土地がとこか確定できずにお困りの場合には、お問い合わせページよりご相談ください。