東京の街並み【永田町は新旧・高低・和のこころ】

タウンウォッチング

政治の中枢

永田町というと、一番最初に抱くイメージが「政治」という方は多いのではないでしょうか。立法府である国会の他に政党の本部などがあり、お隣の霞が関は行政府が密集しています。

上の写真は国会議事堂で、まさに威風堂々といった感じです。西洋建築ですが直線を基調としているあたりが和の雰囲気です。

下の写真は霞が関にある旧法務省本館です。同じ東京にある国の西洋建築とはいえ、随分雰囲気が違うのがわかります。

旧法務省が1895年竣工ですので明治の建物、国会議事堂は1936年の竣工ですので昭和の建物です。

時代の流れの中で日本人の西洋・日本に対する意識が変化していった様子が垣間見えるようです。

国会議事堂の向かいにあるのが議員会館です。

2010年竣工になります。こちらもデザインは直線基調で12階建、地下は5階もあるそうです。一方、国会議事堂は3階建、地下は1階です。

民間の一般建築

国の施設にとどまらず、民有の一般建築物でも「新旧・高低・和のこころ」が永田町のテーマです。

右側が山王パークタワー、キャピトル東急ホテルなどの超高層建物群、左側は昔ながらの酒屋さんや料理屋さんです。

下の写真を見ると山王パークタワー(左)とキャピトル東急ホテル(右)がどれだけ高層かわかります。

さりげなく竹藪を配置しているあたりが和のこころです。

お向かいの昔ながらの料理屋さんがこちらです。

このように「新旧・高低」と対照的でありながら「和のこころ」でつながった建物が同じ通り沿いに向かい合って建っています。

地域の「トーン」を決定づける「何か」

不動産の鑑定において地域の特性は重要な要素です。個別の物件あるいはそのオーナーさんたちは単独では地域の特性を決めることができません。でも物件やその価格は地域の特性に影響を受ける重要な外生変数なのです。

特徴のある地域にはその地域の「トーン」を決定づける「何か」があることが多いのですが、永田町てはこの「何か」は日枝神社ではないでしょうか。

日枝神社とその周辺の高層建物群をつなげているのがこの参道です。

左側の灯篭(?)と右側の建物がそっくり相似図形に見えませんか?

手水舎です。
この竹筒をテーマにさっきのキャピトル東急ホテルの竹藪が作られたのでしょうか?

この水↑が流れついた先がここ?↓

首相官邸前です。

季節は立夏が過ぎて夏至に向かう途上、初夏の薫りが漂っています。

感想

不動産を鑑定するときにはいろいろなことを考えるのですが、その一つに「評価しようとしている物件が地域の特性に適合しているかどうか」ということがあります。

地域が今のような特性を持つのに至ったのにはやはりそれなりの理由がありますので、「浮いてしまっている」物件だと買手がつきにくくなることがあるからです。

永田町は立法の中枢であることから霞が関・虎ノ門と並んで規制業種に属する企業が本社をおいていることも多いです。

例えばNTTドコモは本社が山王パークタワーにありますが、移動体通信はまさに電波の割り当てやインフラの新規参入企業への解放などをめぐって立法・行政の影響を強く受ける業種です。

このような業種が本社を置くことを好む立地であることが、日枝神社というシンボリックな存在と相まって永田町の「ピシッ」とした空気・トーンを生んでいて、それが建物のデザインやテナントの構成に反映されているように思います。